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形と記憶

形と記憶

形は単なる外見ではなく、私たちの記憶と深く結びついています。

形が記憶を呼び起こす

ある物の形を見ただけで、過去の情景や感情が鮮明に蘇ることがあります。例えば、幼い頃に祖母がよく持たせてくれたお弁当箱の懐かしいサイズや感触は、当時の思い出を瞬時に呼び覚ます鍵となります。この現象は、物理的な形に個人的な物語や感情という「非物質的な形」が結びついているからです。形は、過去を呼び覚ますトリガーであり、記憶を閉じ込める器とも言えるでしょう。

記憶が形を生み出す

逆に、記憶やイメージから形が生まれることもあります。私たちは、頭の中にある漠然としたアイデアや感情を、絵画や彫刻といった具体的な「形」として表現しようとします。これは、抽象的な記憶を、他者と共有できる形に変換する創造的なプロセスです。形は、精神世界を外界に具現化するための手段であり、記憶を永続化するための試みでもあるのです。

「形」と記憶は相互に影響し合い、私たちの認識をより深く広げるきっかけになっているのです。